宵の朔に-主さまの気まぐれ-
その真っ青な髪と真っ青な目は父から受け継いだ。

目元は祖父となる十六夜や母の朧に似て切れ長で、すうっと通った鼻梁、誘っているようにいつも少し開いている唇は美しく、ただ何というか…


少しぼんやりしている雰囲気を醸し出していた。

雪男が心配しているのはその点だ。


「氷輪、お前に任せてもいいか?」


「うん。任せて…」


「うーん…。お前だけじゃ心配だなあ…」


「白雷も居るし焔もぎんも居る。ここは問題ない。それにお前が居ないと……なんでもない」


――別に隠しているわけではないが、雪男が傍に居ないとあまり気が休まらない朔が口ごもり、雪男がにやっと笑って鎌をかけようとすると、氷輪が立ち上がろうとして何もないところでよろめいた。


「おい氷輪。ぼんやりすんな。お前がそんなんじゃここは任せられないぞ」


「…今俺何かした?何もしてないのに怒られた…」


…非を認めない。

なかなか負けず嫌いな氷輪がつんと顔を逸らすと朔がまた吹き出し、雪男と朧が夫婦になってすぐに生まれた氷輪のまっすぐな髪をくしゃりとかき混ぜた。


「お前は日頃ぼんやりしてるが強い。何かあった時はちゃんとやれる男だ。信頼してるぞ」


「うん…」


見た目は凛としていてかなりいい男だが、中身は天然。

その中身と外見のあまりの違いに周りから愛されている氷輪が朔に頭を撫でられてふわっと笑う。


「輪ちゃんはできる子だもんね」


「うん。俺、できる子…」


あまり口数は多くはないが、話すとやはり少し変な子。


氷輪が来たことをかぎつけた仲良しの白雷が飛び掛かるようにして氷輪の隣に陣取って肩を抱くと、主さまににかっ。


「大丈夫ー。こいつのことは俺が見てるからー」


「うーん、それもなんか心配だな…」


心配性な雪男がぼやき、そのやりとりに癒されて朔の気分もかなり改善された。


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