宵の朔に-主さまの気まぐれ-
一旦平安町の屋敷に戻った晴明は、すぐに薬を煎じて再び幽玄町を訪れた。
その時にはすでに出産が早まるかもしれないという知らせを聞きつけた十六夜と息吹が駆け付けていて、十六夜と目が合って思わずにやり。
「…なんだその薄ら笑いは。気持ち悪い」
「いやいや、私はどうにもそなたと会うと笑みが漏れてしまっていけないねえ。さあ、これを朝昼晩必ず一包ずつ飲みなさい。ことは急を要するからね」
輝夜や柚葉、雪男や朧、山姫など、この屋敷に常駐している者全ての視線を一心に集めてしまった凶姫は、緊張で顔が赤くなるのを感じながら、白湯に薬を溶かして一口含むと、顔をしかめた。
「この味……っ」
「不味いだろう?良薬は口に苦しと言うのだよ。ただ一包で効き目の出る者も居るから息吹、そなたたちが目を離さぬように」
「はい、父様」
どうせ飲まなければいけないのなら一気飲んでしまえと考えた凶姫は、薬を一気に飲み干してすぐにその後甘い飴を舐めて身を丸めた。
「苦い!口の中が今も痺れているわ!」
「副作用としては動悸や吐き気、眩暈が起こることがある。その腹では動きようもないと思うが、動かずじっとするのが一番だよ」
凶姫の腹は本当に今にも破裂しそうなほど大きく、心配性の柚葉は自らの胸をどんと叩いて鼻息荒く一言。
「私!今日から姫様のお部屋に泊まりますから!片時も離れません!」
「うんうん、私と十六夜さんも赤ちゃんが生まれるまでご厄介になるから朔ちゃんは心配せず百鬼夜行に行ってらっしゃい」
「…行きたくない」
小さな童のように拗ねた朔の小さな本音に、十六夜はさらさらの黒髪をくしゃくしゃとかき混ぜて小さく笑んだ。
「輝夜の力を思う存分利用して帰って来い」
「そうですよ兄さん。兄さんは私を好きにしていいんですよ」
「…鬼灯様、その表現気持ち悪いです」
慰められることなど滅多にない朔はなんだか照れてしまって俯くと、凶姫の手を握った。
その時にはすでに出産が早まるかもしれないという知らせを聞きつけた十六夜と息吹が駆け付けていて、十六夜と目が合って思わずにやり。
「…なんだその薄ら笑いは。気持ち悪い」
「いやいや、私はどうにもそなたと会うと笑みが漏れてしまっていけないねえ。さあ、これを朝昼晩必ず一包ずつ飲みなさい。ことは急を要するからね」
輝夜や柚葉、雪男や朧、山姫など、この屋敷に常駐している者全ての視線を一心に集めてしまった凶姫は、緊張で顔が赤くなるのを感じながら、白湯に薬を溶かして一口含むと、顔をしかめた。
「この味……っ」
「不味いだろう?良薬は口に苦しと言うのだよ。ただ一包で効き目の出る者も居るから息吹、そなたたちが目を離さぬように」
「はい、父様」
どうせ飲まなければいけないのなら一気飲んでしまえと考えた凶姫は、薬を一気に飲み干してすぐにその後甘い飴を舐めて身を丸めた。
「苦い!口の中が今も痺れているわ!」
「副作用としては動悸や吐き気、眩暈が起こることがある。その腹では動きようもないと思うが、動かずじっとするのが一番だよ」
凶姫の腹は本当に今にも破裂しそうなほど大きく、心配性の柚葉は自らの胸をどんと叩いて鼻息荒く一言。
「私!今日から姫様のお部屋に泊まりますから!片時も離れません!」
「うんうん、私と十六夜さんも赤ちゃんが生まれるまでご厄介になるから朔ちゃんは心配せず百鬼夜行に行ってらっしゃい」
「…行きたくない」
小さな童のように拗ねた朔の小さな本音に、十六夜はさらさらの黒髪をくしゃくしゃとかき混ぜて小さく笑んだ。
「輝夜の力を思う存分利用して帰って来い」
「そうですよ兄さん。兄さんは私を好きにしていいんですよ」
「…鬼灯様、その表現気持ち悪いです」
慰められることなど滅多にない朔はなんだか照れてしまって俯くと、凶姫の手を握った。