宵の朔に-主さまの気まぐれ-
産湯を終えた後の赤子は透き通るような真っ白な肌の女の子だった。
皆が部屋を出て行った後、凶姫は朔に身体を起こしてもらって帯を緩めると胸を露わにした。
久々に凶姫の裸体を見た朔は、瑞々しくもいつも以上に膨らんでいる大きな胸を見て目を泳がせた。
「そんなに大きかったか?」
「お乳をあげないといけないからいつも以上に大きくなるんですって。ちゃんと飲んでくれるかしら…」
赤子を胸に近付けると、それは本能なのか――くんと匂いを嗅いだ後すぐに吸い付いてきて、凶姫の顔が輝いた。
「飲んだ…!飲んだわ、朔!」
「すごいな…。弟や妹たちが生まれた時に見慣れているはずなんだけど、すごく新鮮に感じる」
ごくごくと喉を鳴らして乳を吸う赤子は本当に可愛らしくすでに目鼻立ちが整っていて、朔をざわざわさせていた。
「うちの家系は代々一子相伝みたいなもので、その一子の全員が男だったんだ。だから女が当主になった前例がない。この子が俺の跡を継ぐのなら、夫は婿養子になるのかな」
「そう、なの?みんな男の子?それはそれですごいわね…。でも朔、ふたり目が男の子だったなら、その子が跡を継いでもいいのよね?」
「資質に恵まれていれば。そんなことはまだ考えなくてもいいから芙蓉…生んでくれてありがとう」
――すでに出産時の痛みは忘れていた。
ただただ我が子は可愛らしく誇らしく、目元が朔によく似た赤子が乳を飲んでいる姿をずっと見ていたのだが、すぐ満腹になったらしく、あっという間に寝入ってしまった。
「鼻提灯ができそうな位よく寝てる。ちょっと夜空を見せてもいいか?」
頷いた凶姫を見届けた朔は、赤子を腕に抱いて障子を開けると、縁側から月の輝く夜空を見上げた。
うっすらと空が薄らいで夜明けが近付いてきた頃、朔は愛しい眼差しで赤子を見つめて頬をちょんと突いた。
「ねえ朔、もう名は考えてあるの?」
「ん、今決めた」
指を吸いながら寝ている赤子に優しく話しかけた。
「お前は暁(あかつき)だ。生まれてきてくれて、ありがとう」
赤子――暁はにこ、と笑ってまた眠りに落ちた。
皆が部屋を出て行った後、凶姫は朔に身体を起こしてもらって帯を緩めると胸を露わにした。
久々に凶姫の裸体を見た朔は、瑞々しくもいつも以上に膨らんでいる大きな胸を見て目を泳がせた。
「そんなに大きかったか?」
「お乳をあげないといけないからいつも以上に大きくなるんですって。ちゃんと飲んでくれるかしら…」
赤子を胸に近付けると、それは本能なのか――くんと匂いを嗅いだ後すぐに吸い付いてきて、凶姫の顔が輝いた。
「飲んだ…!飲んだわ、朔!」
「すごいな…。弟や妹たちが生まれた時に見慣れているはずなんだけど、すごく新鮮に感じる」
ごくごくと喉を鳴らして乳を吸う赤子は本当に可愛らしくすでに目鼻立ちが整っていて、朔をざわざわさせていた。
「うちの家系は代々一子相伝みたいなもので、その一子の全員が男だったんだ。だから女が当主になった前例がない。この子が俺の跡を継ぐのなら、夫は婿養子になるのかな」
「そう、なの?みんな男の子?それはそれですごいわね…。でも朔、ふたり目が男の子だったなら、その子が跡を継いでもいいのよね?」
「資質に恵まれていれば。そんなことはまだ考えなくてもいいから芙蓉…生んでくれてありがとう」
――すでに出産時の痛みは忘れていた。
ただただ我が子は可愛らしく誇らしく、目元が朔によく似た赤子が乳を飲んでいる姿をずっと見ていたのだが、すぐ満腹になったらしく、あっという間に寝入ってしまった。
「鼻提灯ができそうな位よく寝てる。ちょっと夜空を見せてもいいか?」
頷いた凶姫を見届けた朔は、赤子を腕に抱いて障子を開けると、縁側から月の輝く夜空を見上げた。
うっすらと空が薄らいで夜明けが近付いてきた頃、朔は愛しい眼差しで赤子を見つめて頬をちょんと突いた。
「ねえ朔、もう名は考えてあるの?」
「ん、今決めた」
指を吸いながら寝ている赤子に優しく話しかけた。
「お前は暁(あかつき)だ。生まれてきてくれて、ありがとう」
赤子――暁はにこ、と笑ってまた眠りに落ちた。