宵の朔に-主さまの気まぐれ-
疲れ果てた凶姫と暁がぐっすり寝てしまった後、朔は居間に移動して皆から祝福された。
「朔ちゃんおめでとう!お乳飲んでくれた?」
「ん、沢山飲んでました。あと、名を暁と定めました」
「暁ちゃん、かあ。うん、可愛いっ!朔ちゃん…ううん、私に似てたよねっ?」
「こらこら息吹、父親は主さまなんだからお前に似てんのは当然だけど自分が生んだみたいに言うなよな」
きゃっきゃと声を上げて話が盛り上がる中、十六夜の一言が空気を凍らせた。
「我が鬼頭(きとう)家は鬼族の始祖――すなわち字面の通り、鬼の頭だ。女が当主となるのは前例がないし、務まると思うか?」
――鬼頭家。
鬼八一族の血族だったが、鬼八が封じられて後衰退して滅びた後、十六夜の一族が始祖と認められて反映してきた。
百鬼夜行の主として表舞台に立つようになってからは鬼八の封印と百鬼夜行を務める者を立てるため、何がなんでも子を作らねばならなかった。
だが不思議なことに子はひとりしか恵まれず、その一子が必ず男。
当主の朔である第一子が女であり、二子目に恵まれなければ、この子が当主となる。
「鬼頭…」
「俺たちの子が暁だけだったとしても輝夜が居ます。朧の子たちが居ます。皆が父様…あなたの子です。だから俺の子でなくとも当主は務まります。そうですよね?」
「…そうだが、長男のお前の子であるべきだ」
「もちろんふたり目の子に恵まれるように励みますよ。母様も朧も多産ですから、その辺は心配しないで下さい」
くすくすと笑う朧と息吹。
何をどう言おうとも自分の意見は通らないのだと悟った十六夜は、肩を竦めて座椅子に身体を預けて腕を組んだ。
「…好きにしろ。あと俺にも暁を腕に抱かせろ」
「もちろんですよ。輝夜、次はお前の番だぞ」
「ははは、精進します」
その頃凶姫と暁は、ふたりで鼻提灯を膨らませながら熟睡していた。
「朔ちゃんおめでとう!お乳飲んでくれた?」
「ん、沢山飲んでました。あと、名を暁と定めました」
「暁ちゃん、かあ。うん、可愛いっ!朔ちゃん…ううん、私に似てたよねっ?」
「こらこら息吹、父親は主さまなんだからお前に似てんのは当然だけど自分が生んだみたいに言うなよな」
きゃっきゃと声を上げて話が盛り上がる中、十六夜の一言が空気を凍らせた。
「我が鬼頭(きとう)家は鬼族の始祖――すなわち字面の通り、鬼の頭だ。女が当主となるのは前例がないし、務まると思うか?」
――鬼頭家。
鬼八一族の血族だったが、鬼八が封じられて後衰退して滅びた後、十六夜の一族が始祖と認められて反映してきた。
百鬼夜行の主として表舞台に立つようになってからは鬼八の封印と百鬼夜行を務める者を立てるため、何がなんでも子を作らねばならなかった。
だが不思議なことに子はひとりしか恵まれず、その一子が必ず男。
当主の朔である第一子が女であり、二子目に恵まれなければ、この子が当主となる。
「鬼頭…」
「俺たちの子が暁だけだったとしても輝夜が居ます。朧の子たちが居ます。皆が父様…あなたの子です。だから俺の子でなくとも当主は務まります。そうですよね?」
「…そうだが、長男のお前の子であるべきだ」
「もちろんふたり目の子に恵まれるように励みますよ。母様も朧も多産ですから、その辺は心配しないで下さい」
くすくすと笑う朧と息吹。
何をどう言おうとも自分の意見は通らないのだと悟った十六夜は、肩を竦めて座椅子に身体を預けて腕を組んだ。
「…好きにしろ。あと俺にも暁を腕に抱かせろ」
「もちろんですよ。輝夜、次はお前の番だぞ」
「ははは、精進します」
その頃凶姫と暁は、ふたりで鼻提灯を膨らませながら熟睡していた。