宵の朔に-主さまの気まぐれ-
輝夜と柚葉は、天満に促されるまでずっと宴会の輪に加わっていた。

それもこれも、こうして生まれた家でゆっくり時を過ごしたことがほとんどなかったため、その場から離れ難く、天満にぽんぽんと腕を叩かれた。


「輝兄、柚葉さんはお疲れのようですからそろそろ…」


「ああ、そうですね、すみませんお嬢さん、私だけ楽しんでしまっていて…」


「いいんですよ、私の方こそ少しお酒を飲んだだけで眠たくなっちゃって…」


「妊娠中は眠たくなるといいますからね、どれ」


ひょいと抱き上げられた柚葉が慌てて首にしがみ付くと、天満は豪快に酒を煽りながら輝夜とよく似た微笑みを見せた。


「おやすみなさい、輝兄、柚葉さん」


主賓がその場を去っても大盛り上がりは続き、柚葉が何度も欠伸をすると、輝夜は長い廊下を歩きながら肩を竦めた。


「これでは初夜どころじゃありませんねえ」


「私妊娠中ですよ?何するつもりだったんですか…」


「兄さんは凶姫…芙蓉さんが妊娠していた時もしていたようですが?まあ私は淡白な方なのでしつこく求めたりしませんから安心して下さい」


輝夜が住み着いている客間に着くと、もう寝落ちしてしまいそうなほどうとうとしている柚葉の白無垢を脱がせてやり、足袋も脱がせて用意されていた浴衣に着替えさせると、それこそ柚葉は先に寝てしまってふわふわの髪を撫で回した。


「幸せそうですね。…私を幸せにしてくれてありがとう」


欠けていたものを取り戻した。

居たい場所に戻って来れた。

大切な人を、手に入れた。


――柚葉の無邪気な寝顔を見ていると、それこそ眠たくなってしまって一緒に横になると、あっという間に眠りに落ちてしまった。


新たな命に恵まれた――

この時この瞬間を大切にしながら、眠りに落ちた。
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