宵の朔に-主さまの気まぐれ-
凶姫が屋敷に戻ると、縁側には晴明と山姫の姿が在った。
今日は山姫が百鬼から抜けて自由の身となる日だ。
あまり山姫と会話を交わしたことがなかった凶姫は、手に箒と叩きを持ちつつもおずおずと頭を下げた。
「たすき掛けに箒と叩き?一体何をするつもりなんだい?」
「あ、あの…蔵の掃除を…」
山姫が首を傾げると、赤毛がさらりと揺れてとてもきれいで見惚れながらもじもじしてちらちら見ながら口下手な自身を呪っていた。
「蔵ねえ…あたしは一度も入ったことがないし、出入り厳禁だから手伝えなくてごめんねえ」
「い、いいえ。あの…ここを出て行っても沢山遊びに来て下さい。お掃除とかお料理とかも沢山教わりたいんです」
「もちろんいいよ、じゃあしばらくは特訓もかねて足繁く通おうかねえ」
「そういう理由ができて良かったな」
――朔が山姫を見送らないのも、山姫が今後も足繁く通ってくれることを知っているからだ。
急いでいた凶姫はもう一度頭を下げて足早に蔵に戻り、わあわあと口論している朔と雪男に駆け寄った。
「なんで俺がこんな目に!」
「お前はここに入れる数少ない存在なんだぞ、ありがたく掃除をしろ」
「それがものを頼む態度か!ったく…俺は右側からやるから芙蓉は左から!」
「はい!」
凶姫は通り名よりも親しい者たちに真名を呼んでもらうことを選び、雪男から真名を呼ばれて少しうきうきしながら掃除を開始した。
「俺も手伝おうかな」
「主さまは掃除下手だから外で待機!雛の遊び相手にでもなってろ!」
「ひどい。主の俺になんて物言いなんだ」
「うっせえ、こっちは息吹の腹に根付いた頃から知ってんだ!ほら、外で待機!」
…一見喧嘩にも見えるのだが、何故か朔は満面の笑みで蔵を出て行き、早く書物を読みたい凶姫はこちらもまた引き留めもせずに掃除を始めた。
「天気が良くて眠たくなるな…」
屋敷に戻った朔は誰も居ない縁側にごろんと寝転んで昼寝をして、やっぱり雪男と凶姫に怒られた。
今日は山姫が百鬼から抜けて自由の身となる日だ。
あまり山姫と会話を交わしたことがなかった凶姫は、手に箒と叩きを持ちつつもおずおずと頭を下げた。
「たすき掛けに箒と叩き?一体何をするつもりなんだい?」
「あ、あの…蔵の掃除を…」
山姫が首を傾げると、赤毛がさらりと揺れてとてもきれいで見惚れながらもじもじしてちらちら見ながら口下手な自身を呪っていた。
「蔵ねえ…あたしは一度も入ったことがないし、出入り厳禁だから手伝えなくてごめんねえ」
「い、いいえ。あの…ここを出て行っても沢山遊びに来て下さい。お掃除とかお料理とかも沢山教わりたいんです」
「もちろんいいよ、じゃあしばらくは特訓もかねて足繁く通おうかねえ」
「そういう理由ができて良かったな」
――朔が山姫を見送らないのも、山姫が今後も足繁く通ってくれることを知っているからだ。
急いでいた凶姫はもう一度頭を下げて足早に蔵に戻り、わあわあと口論している朔と雪男に駆け寄った。
「なんで俺がこんな目に!」
「お前はここに入れる数少ない存在なんだぞ、ありがたく掃除をしろ」
「それがものを頼む態度か!ったく…俺は右側からやるから芙蓉は左から!」
「はい!」
凶姫は通り名よりも親しい者たちに真名を呼んでもらうことを選び、雪男から真名を呼ばれて少しうきうきしながら掃除を開始した。
「俺も手伝おうかな」
「主さまは掃除下手だから外で待機!雛の遊び相手にでもなってろ!」
「ひどい。主の俺になんて物言いなんだ」
「うっせえ、こっちは息吹の腹に根付いた頃から知ってんだ!ほら、外で待機!」
…一見喧嘩にも見えるのだが、何故か朔は満面の笑みで蔵を出て行き、早く書物を読みたい凶姫はこちらもまた引き留めもせずに掃除を始めた。
「天気が良くて眠たくなるな…」
屋敷に戻った朔は誰も居ない縁側にごろんと寝転んで昼寝をして、やっぱり雪男と凶姫に怒られた。