宵の朔に-主さまの気まぐれ-
一日できれいになるはずもなく、ある程度積もった埃を払った凶姫と雪男は、しっかり蔵の鍵を閉めて屋敷に戻った。


すると玄関を出て門に向かう集団と朔を見つけて、足を止めて雪男を見上げた。


「もしかして…もう皆さん帰るの?」


「ああ、あいつらもそれぞれ家業を手伝ってるから長居はできないんだ。次に会えるのはいつになるか分からないから挨拶しに行った方がいいぜ」


しかし自分は埃まみれ…

一旦は躊躇したもののお世話になった朔の弟妹たちと次に会えるのがいつになるか分からないと言われて慌てて後を追いかけた凶姫は、すぐに気付いて待ってくれていた朔に追いついて息を切らしながら朔に抱っこされていた暁の頭を撫でた。


「きれいになった?」


「なるわけないでしょ、あと数日かかるわよ。それより皆さん帰るのよね?」


如月が皆に声をかけて凶姫の元に集まると、次々と暁の頭を撫でたり手を握って別れを惜しんだ。


「次にここへ来る時は、何もなければこの娘が当主の座に就く時だろう。何もなければ」


「妙な強調をするんじゃない。何も起こるはずがない」


「いやいや朔兄、きれいな娘になるのは確定事項なんですから、何もないわけがない。一大事が起きたら総出ですぐ駆けつけます。必ず」


「芙蓉さんもお元気で。またねー」


「あ、あの!お世話になりました!」


なんとか挨拶ができると、門を出た如月たちはすぐ上空を飛んで散り散りに解散した。


「ねえ朔、柚葉と輝夜さんと天満さんは?」


「天満と輝夜は別れが苦手だから屋敷に居る。柚葉はちょっと体調が悪いって言ってたから寝てるんじゃないかな」


「なんですって!?つわりよねきっと。朔!早く!」


「はいはい」


手を引っ張られて笑いながら屋敷へ戻る。


別れはつらいけれど、その分再会した時の喜びはひとしおだろう。

沢山の弟妹たちに恵まれて良かった――

父と母、そして弟妹たちに感謝しながら、にこにこしている暁に笑いかけた。
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