こっちむいて?羽生
なんでそんなこと言うのよ……


美羽のこと好きなくせに。


今までなら嬉しかった当たり前の言葉が、今は胸に突き刺さる。


だから私はついぶっきらぼうに返事しちゃったんだ。


「美羽と帰る……

元気でね?羽生

またどっかで会えたら遊ぼ」


これで最後なんて嫌なのに、私はこんなときまで素直になれない。


「なに言ってんだよ?

丸山と孝弘の邪魔しちゃ悪いだろ?」


そんな羽生の言葉にも可愛くない一言をぶつけてしまう。


「だったら一人で帰るからいい」


「なんだよ、それ……」


ムッとしたようにそう言った羽生は、背中を向けていた私の肩をグイッと掴んで自分の方に向かせようとした。


やだ!こんな顔見られたくない!


「羽生くん、あの……ちょっと愛里と話させて?」


ちょうど私の真正面にいた美羽が、私を守るようにそう言った。


少しの沈黙のあと、羽生の手が肩から離されて、わかった……と小さく呟く声が聞こえる。


ガタッと音がして、羽生が教室を出ていったのがわかった。


張りつめていた気持ちがふっと緩んで、私は小さく息をついた。

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