葵くん、そんなにドキドキさせないで。
ゴクリと唾を飲み込む。
な、なんだか悪い予感がするのは気のせい?
「葵くん……?」
静かに名前を呼ぶと、ムスッと不機嫌顔になる。
「バァーカ」
「えっ!」
掴んでいた腕を離して、ため息をついた葵くん。
「無防備すぎなんだよ、田中さんは」
「そ、そんなことは……」
「あるね。なに勝手に大野に触られてんの」
うぐっ、と言葉に詰まる。
確かにそうだけど!でも、あれはいきなりだったし、しょうがなかったんだよ?
「……俺のことだけ見てっつったじゃん」
私の首筋にそっと触れて、小さく呟いた葵くんに、キュンと胸が鳴る。
ふ、不意打ち……。
持っていたタオルをぎゅっと握りしめた。
「……葵くんのことしか見てなかったよ」