葵くん、そんなにドキドキさせないで。
そうこうしているうちにチャイムが鳴った。
田中さん、見つからないし。
あと行ってないところといえば……。
"保健室"と書かれた扉の前で立ち止まる。
ここにいなかったら教室戻る。
明日の朝一番に田中さんとこ行って……。
そう考えながらゆっくり扉を開けた。
三つあるうちの、一番奥のベッド。
そこだけカーテンがかかっている。
「……田中さん?」
田中さんは、3ヶ月限定の彼女で。
女避けのためだけの、道具みたいなもので。
しかもお人好しで、ビクビクしてて、どうしようもない奴で。
困らせたくて、ついいじめてしまう。
だけど、
『私には本当の葵くんでいいからね』
"俺"のことを、多分一番見てくれてた。