リボンと王子様
「ママ?
私、舞花と樹と約束があるからもう行くね」


ガタン、と椅子を引いて蘭ちゃんが立ち上がる。


「あら、もうそんな時間?
千歳、悪いんだけど送っていってあげてくれない?」

「何で俺が?
今日、車で来てないんだけど」

「だって、私はまだパンケーキいただいている途中だし。
あなた、食べ終わっているでしょ?
心配しなくても、穂花さんとここで待っているわよ」


そう言って有子おばさまは自身の車のキーを千歳さんに差し出した。


「……お兄ちゃん、送ってくれるなら早くしてくれない?
遅れちゃう」

「……お前、本当に可愛くないな……。
穂花、ごめん。
すぐに戻るから、母さんと待ってて」


私に申し訳なさそうに断って、千歳さんは席を立った。

私は二人を、曖昧な笑顔で見送った。


二人の姿が見えなくなって。


カチャリ。


有子おばさまが紅茶のカップをソーサーに置いた。


「……私に話したいことがあるのよね?」

私を糾弾するわけでもなく、至極穏やかに有子おばさまが口を開いた。
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