宮花物語
「いないではないか。」

「あれ……」

もしかして、気を使ってくれた?

そんな事を考える間もなく、紅梅を抱き上げた王は、彼女の屋敷に、たどり着いた。

医師が傷の手当てをし、その間も、王は紅梅の側に寄り添う。

紅梅には、それが何とも奇妙に思えて、仕方がなかった。

稽古の途中で、紅梅が怪我をするなど、今に始まった事でもなく、その時も手当ての最中に、側に付いていてくれる事はなかったからだ。


「王……私は大丈夫ですから、公務に戻って下さい。」

「そう申すな。」

医師が包帯を巻き終わると、王は医師に尋ねた。

「どうだ?傷は残りそうか?」

「いいえ。傷も深くはありませんし、長さも縫う程ではありません。怪我されたのは、親指の付け根でございますから、血が多く出て驚かれたのでしょう。」

「そうか……よかった。」

医師が一礼をし、紅梅の部屋から去ると、王は早速紅梅を抱き寄せた。
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