宮花物語
それから1週間後。

黒音が、信寧王の第5妃になる事が、決まった。

「よかったわね、黒音。」

黄杏は新しい衣装を、黒音に着せてやった。

「これも、黄杏様のおかげでございます。」

黒音は、腰を曲げるほどに、黄杏に頭を下げた。

「黒音。」

黄杏は改めて、黒音の手を握った。

「一日も早く、お子が授かるよう、祈っていますよ。」

「有り難うございます。」

黒音も、笑顔で応えた。

すると黄杏は、もっと強く、黒音の手を握りしめた。

「……お願いですよ、黒音。」

「黄杏様?」

黄杏の目には、涙が光っていた。

「信寧王に、必ずお子を抱かせてあげてください。」

その目からは、信寧王に対する愛情が、涙となって溢れだすようだった。

「はい。」

黒音は、黄杏の手を、強く握り返した。

「黄杏様へのご恩を返す為にも、この身をとして、励みます。」

「ええ。」

そうして黒音は、黄杏の屋敷を出た。
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