宮花物語
黒音の屋敷は、丁度黄杏の向かい側。

青蘭の屋敷の、南隣だった。

既に新しい高価な調度品が、屋敷には揃っていた。

黒音は、妃だけが座る事ができる、背もたれの高い椅子に、腰かけた。

「子を産めなくなった女は、惨めね。」

黒音は、窓から見える黄杏の屋敷を、ちらっと見た。

「王に、お子を抱かせてね?」

ふっと、鼻で笑う黒音。

「抱かせるわよ。必ずこの国の跡継ぎをね。そうじゃなかったら、奴隷扱いされていた村を捨て、お妃付きの女人に忍びこみ、まんまとお妃の地位を手に入れた、甲斐がないじゃない。」


そう。

黄杏が国の外れから、この都に来るまでの間、籠の周りに付ける程になったのは、黒音の巧妙な作戦があったからだ。

生まれながら貧しく、後妻である継母にいびられ、こき使われながら暮らしていた少女時代。

村長の家に奉公に出た時も、寝る間も食べる暇も与えられない程に、働かせられた。
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