宮花物語
そして溢れた涙を、拭ってくれる優しい手。

「いいえ………何も。ただ……」

「ただ?」

「王が、とてもお優しいので……」

そう言うと、また涙が勝手に溢れた。

「今日は、優しくすると言ったではないか。」

「あっ……」

信志の欲情の吐息と共に、黒音の体には快楽の波が、何度も何度も押し寄せた。


事が終わった後も、黒音は夢の世界から、抜け出せないでいた。

「黒音。」

信志は腕枕にいる黒音を、抱き寄せた。

「そんなによかったか?私との、初めての夜は。」

「はい……」

黒音も信志の胸に、顔を寄せた。

「今まで、こんなに優しく抱かれた事は、ございません……」

そう言うと信志は、黒音の額に、口付けを落とした。


「初めての男よりも、よかったか?」

「何を申されるのです?」

「許せ。男と言うのは、妻になった女にとって、一番で在りたいモノなのだ。」
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