宮花物語
それを見た信志は、黒音の手を引き寄せた。

「信寧王様?」

「……悪かった。」

黒音の耳元に、甘い声が聞こえる。

「そなたの言う通りだ。私達は今日から夫婦だと言うのに、冷たくしてすまなかった。許せ。」

黒音は、信志の胸の中で、首を横に振った。

「いいのです。分かって頂ければ……」

すると信志は、そのまま黒音を寝台へと、ゆっくり寝かせた。

「その代わり、今日は優しく抱いてやる。」

「えっ……」

驚く間もなく、黒音の首筋に、熱い舌が這う。

「はぁ……」

そして肌の上を、温かい手が滑る。

「ぁぁ……」

黒音はいつの間にか、夢を見ているような、気分になった。


今までの男は、自分の体を玩具のようにしか、思っていなかった。

こんな陶器を触るように、熱く柔らかく肌に触れられた事は、なかったのだ。

「黒音?」

目の前で、優しい目が自分を見つめる。

「どうして、泣いているのだ?」
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