宮花物語
月明かりの夜。

村では見かけない洗練された男が、月に見とれるあまり、そのまま池に入ってしまった。

見かけと中身のあまりの差に、信じられず止める事もできなかったが、ハッと我に返った黄杏は、急いで池からその男を救い出した。

それに加え、地位を表す帽子を池に忘れる始末。

王とは知らない黄杏は、信志に呆れるばかりだった。

だがそれもつかの間、その瞳の美しさに、黄杏は夢中になってしまった。


忘れられる訳がない。

知らずに黄杏の目から、涙が零れる。


「待ってくれ、黄杏。」

引き留める信志に、簡単に捕まってしまう。

本当は、この手を繋いでいて欲しいのだ。

「あの時、そなたはお妃候補ではなかった。でも、私はそなたを諦められなかった。今もその時と同じ気持ちだ。」

「王……」

信志の目に、涙で顔がグチャグチャになっている黄杏が映る。
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