宮花物語
髪を洗い体を洗い湯に浸かり、一晩の疲れを癒した。

「あれ?護衛長、こんな時間に湯殿ですか?」

部下の一人が、湯殿に入ってきた。

「ああ、おまえは?」

「はい。外の門の警備で。今、交代してきたばかりです。」

そして部下も、湯に浸かった。

「そうか。ご苦労だったな。」

「いいえ。」


屋敷に帰れば、大部屋に大勢で寝泊りする護衛達。

こうして湯に浸かっている時が、一番疲れを癒すと、勇俊は知っていた。

だから湯殿にいる時は、部下には何も指示しない。

できるだけ、放っておいてやる事にしていた。


「ところで、黄杏様の客人、とても偉い方なのですか?」

「そう言う訳でもない。南方の商人だ。」

そう。

お妃様の兄上だと言う事は、秘密だ。

「へえ。じゃあ、俺の勘違いかな。」

「どうした?何か気になる事でもあったのか?」

勇俊は、部下の方を向いた。
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