宮花物語
実の兄が、そのような事になっていると、微塵も知らない黄杏は、無事に美麗の元へ、帰っているものだと信じていた。

「お子か……一度、会ってみたいものだわ。」

黄杏は、兄の将拓と幼馴染みの美麗の、幸せそうな家庭を、頭の中で想像した。

自分も、王と出会っていなければ、村の誰かと結婚し子を産み、家庭を築いていたかもしれない。

そう思うと、胸がチクッと痛んだ。


その時、屋敷の入り口の扉が開いた。

「黄杏。」

「信志様。」

時間が経つのも早いもので、今日も信志が、お妃の屋敷を訪れる時間になっていた。

このところ、夜はめっきり黄杏の元しか、通わなくなった信志。

まるで本当の夫婦は、どちらなのか、分からなくなる程だ。


「ところで黄杏。最近、紅梅と話をしたか?」

「紅梅さんと?いいえ。何かありましたか?」

「ああ。最近紅梅が、神殿に籠っているようなんだ。」
< 290 / 438 >

この作品をシェア

pagetop