宮花物語
一番王のお子が欲しいと願っていた紅梅。

それは信志にも痛い程に分かっていた。

先に黄杏が妊娠した時も、ボヤキはしたが祝いの品も贈ってくれた。

紅梅は勝気だが、人を陥れたりはしない。

そういう人間なのだ。

だからこそ余計に、子を作ってやらねばと、張り切っていた矢先の黒音の懐妊の知らせだったのだ。

「さあ、急いで黒音さんに、お顔を見せてあげてください。」

「ああ。」


名残惜しそうに、紅梅と別れると、次は第4夫人・黄杏の出番だ。

「信寧王様。黒音さんのご懐妊、おめでとうございます。」

「黄杏。」

先にできた黄杏の子が流れたのは、密かに黒音の手によるものと言う噂は、信志の耳にも入っていた。

今回の黒音の妊娠を、どんな気持ちで、聞いたのか。

「黄杏…あの……」

「さあ早く。黒音さんに、よくやったとお声を掛けてあげて下さい。」

心配など無用と言うくらい、黄杏は笑顔を見せていた。
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