宮花物語
白蓮が、失意の内に神殿から出ようとした時だ。

紅梅の父・忠仁が神殿を訪れた。

「白蓮様?」

思わぬ場所で、思わぬ人物に会い、白蓮は体が飛び上がる程驚いた。

「どうして白蓮様がここに?」

忠仁にそう聞かれ、白蓮は紅梅と同じように、懐妊祈願に来たかと思われるのが恥ずかしくて、顔を覆った。

「いえ……大した事ではありません。」

「はい……」

白蓮は慌てて、話題を変える。

「そう言えば忠仁。黒音の事、聞きましたか?」

「はい。残念な結果になりました。」

いつでも冷静な忠仁。

自分の娘が、懸命に祈っている姿を見ると、他の妃に子が産まれずによかったと思っているのだろう。


「ところで忠仁。」

「はい。」

白蓮は何を今更、こんな事を聞くのかと、自分を疑った。

「……忠仁は、王が幼い頃から側に仕えていますね。」

「はい。幸いな事に。」

「その……王の兄君の事を、知っていますか?」
< 351 / 438 >

この作品をシェア

pagetop