宮花物語
「えっ?王のですか?」

忠仁は困った顔をした。

「……いえ、私は王が皇太子になられてから、側にお仕えしましたので、詳しくはわかりません。そう言った方がいらしたと言うのは、風の噂でお聞きした事がありますが……」

「そうですか。変な事を聞きましたね。」

「いいえ。私でお答えできるような事であれば、何なりとお聞きください。」

忠仁はそう言って頭を下げると、紅梅の近くへと寄って行った。


あまりに幼くして亡くなられたせいか、王の兄の事は、誰も詳しく知らない。

でも王は、自分の後ろに、兄の姿を見ている。

白蓮は、小さくため息をついた。

その時だ。

しわがれた声が、白蓮に聞こえた。


「ああ、懐かしい。あの時の赤子だ。」

白蓮が声のする方を見ると、白髪で骨と皮ばかりの老人が、神殿の外の廊下に座っていた。

「あの……私の事ですか?」

「ああ……他に誰がいる?」

白蓮は周りを見たが、他に誰もいない。
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