宮花物語
「白蓮。そなたがいくら自分を責めても、もう黒音は帰ってこない。それよりも、亡くなった黒音の分まで、そなたは生きなければいけないだろう。」

白蓮の目から、涙が流れた。

「それに、こんなやせ細って寝込まれたら、喧嘩もできぬではないか。早く元気になって、また夕食を一緒にとろう。」

力強く手を握る信志に、白蓮は頷くしかなかった。


「そうだ。めでたい話があるのだ。」

「めでたい?……もしかしたら……」

白蓮の顔が、少しずつ明るくなっていった。

「ああ、そうなのだ。また私の子が、できたのだ。」

「まあ!」

嬉しさのあまり、白蓮はよろめきながら、起き上がった。

「大丈夫か?」

「ええ。もう横になっている暇など、ございません。」

しばらく寝たきりであったと言うのに、どこにそんな力があったのか。

少し前の白蓮とは、全く違う人のように、元気になっていた。


「それで、どの妃の元に?」
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