宮花物語
黄杏は、なぜか微笑む事ができた。

自分も一緒。

産みの苦しみに、今は耐えるだけしかできない。


「波が治まったら、握り飯でもいいから、食べておきなさいよ。腹が減って、力が出ないのでは、産まれるものも、産まれん。」

「はい……」

黄杏は、痛みの波が治まると、女人に差し出されたおにぎりに、手を伸ばすが、直ぐにまた、痛みが襲ってくる。

「無理せんでええよ。食べれる時に食べて、眠れる時に寝ておきんさい。」

そう言って産婆は、また呑気にお茶をすすっていた。


「……紅梅も同じように、苦しんでいたのですか?」

「ああ!あの子はな。そんなに痛そうにはしておらんかった。元来、痛みに強いお人なのかもしれん。」

黄杏は、紅梅が羨ましくなった。

思えば、自分の人生、苦しさや痛みなど、ほとんどなく過ごしてきた。

「……人生って、上手くできているんですね。」

「何を言うんじゃ。苦しまずに産んだら、その後の長い間、可愛がって育てようとは、思わんじゃろうに。」
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