宮花物語
布を取ろうとしない黄杏に、信志は自分で布を取って、口に入れた。

「では父上、母上、黄杏。信志様を動かぬよう、押さえてくださいね。」

言われた3人は、それぞれ、信志の身体を両手で押さえた。

「いきますよ、信志様。」

裂けた傷に針が通ると、信志はこれ以上にないくらいに、大声で叫んだ。

その度に、押さえている3人は、目を瞑り、その声を聞かなくては、ならなかった。

「よし。もう終わりましたよ。」

はぁはぁと、息を切らしている信志の左腕は、綺麗に細かく縫われていた。

「これなら、傷も目立たなくなるだろう。」

満足気に、将拓は清潔な布で、傷を巻き始めた。


「兄様。そんな事もできるのね。」

「まあな。地方都市では、夜歩いているだけで、何者かに斬られる。このくらいの処置ができなくては、次から次へと命が無くなっていく。」

布を巻き終わった後、黄杏は母が持って来た新しい上着を、信志に掛けた。
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