宮花物語
「……先程の話、本当か?」

黄杏にもたれ掛かっている信志が、口を開いた。

「地方の都市では、夜歩いているだけで、斬られるという話だ。」

「ああ……本当ですよ。」

将拓は針と糸を、黒い布に入れた。

「この細い針と糸も、傷が目立たぬように、揃えたものなんです。」

「そうだったのか。知らなかった。」

「信志様は、都に住んでいらっしゃいますからね。」

その言葉に、黄杏と将拓の両親は、顔を合わせた。

「あの……信志様は、中央のお役人なのですか?」

「えっ……あっ、いや、私は、」

恋人の両親に、自分の身分を明かそうとした信志に、将拓は被せるように、言い放った。

「ええ、そうですよ。しかも、私とは違って、相当ご身分が高い。」

将拓と信志は、向き合った。

「では……なぜ、そんな身分の高いお方が、黄杏とこんなに、仲がよろしいのでしょうか。」

母が心配そうに尋ねた。
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