宮花物語
そして黄杏と一緒に微笑んだ黒音は、すっと立ち上がった。

「では黄杏様。まずは湯殿に参りましょう。」

「ああ……そうね。」

女人を従え、黄杏がやってきた湯殿は、白蓮が住むと言う、一番奥の立派な屋敷にあった。

「ここにしか、湯殿はないの?」

「はい。お妃様用の湯殿は、ここにしかございません。」

「そう……」

自分の屋敷から歩いて、5分もしない場所だが、湯殿に入った後、外を歩いて戻る事を考えると、少しだけ憂鬱になる。


「こちらでございます。」

黒音に案内され、脱衣所に入る黄杏。

湯を浴びる為、服を脱ぎ始めると、黒音ともう一人の女人が、そのまま隣にいる。

「あの……」

「はい。何でございましょう。」

「……湯に入るのに、誰かに見られていては、服が脱げないわ。」

すると黒音は、下を向いたまま、こう言った。

「湯殿には、お妃様お一人で入る事は、できません。いつも女人が、従う決まりでございます。」
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