烏丸陽佑のユウウツ
はぁ。…何も無い内だって、そのうち仕事帰りだって言って一緒に来るようになるかも知れない。俺も大概だな…。部長さんには返事をしていないと解って、悠長に気を抜いてる場合でもないのに。いつ思い立って、いい返事をするかも知れないっていうのに。多分、それももうそろそろなんじゃないのかな。
3Bの話…。あれはどういう意味で持ち出した話なんだろう。ただの話の種か。…それとも。この職業の俺とは、本気の恋も、その先も、自分は考えられないという事…、遠回しで解らせようとしたのか。はぁ、単なる会話の一つを一々取り上げて考えたらきりが無い。さっぱり解らんな。それに、メールもだ。
どうして今までしなかった事をしたんだ。特に寄越さなくても問題ないくらいの事じゃないか。…んー。ただの気まぐれか。妙な夢の話に、鍵の騒ぎだ、…落ち着かなかったからか。俺の…声が聞きたかったとか、…でも無いわな~、そもそも電話ではない、メールだったし。会いたかった、でも無い。それも、ちょい前まで会ってた訳だし…。やっぱり、眠れないついでの気まぐれか。
「こんばんは」
「んの゛ー!……びっくりした…。アイスピック、突き刺すところだったぞ…危な…」
カウンターから身体を伸ばして覗き込むようにして声を掛けられた。
「あ。ごめんなさい、大丈夫でしたか?こっちこそ、その声にびっくりです。私はお客様ですよ?目の前に立ってるのに、いつまでも気が付かないから…考え事ですか?」
「悪かったな…まあな」
今夜はもう来ないと思っていたのに。ボーッとしてた訳じゃないが、多少気が抜けていたのは確かだ。…俺が引き寄せた訳じゃないよな…。
「遅い時間から来るなんて、どうしたんだ?あー、ご飯は済んでるのか?」
「…フフフ」
「どうした…何かいい事でもあったのか?」
「いいえ、違います。今日に限った事ではないし…相変わらずだなと思って。私が悪いんでしょうけど」
「…何がだ」
「いつまでも心配させてしまうような…そんな印象のままなんだなと思って。いつもいつも、母親みたいに…ちゃんと食べてるか、心配してもらってるから」
「…何だよ、急に。心配っていうか…実際、聞いたら食ってない時があるからな。なのに、アルコール、飲もうとするじゃないか。で、食ったのか?今日は」
「フフ…はい。食べました」
「そうか、ならいい」
「寂しい?」
「あ゙?…何が」
「食べさせられなくて?」
「別に…寂しいとかは違うだろ。で?」
「今日もモスコミュール、です」
「解った。…あぁ、ちょっと前まで、黒埼君来てたんだぞ?」
「…そうだと思いました。もうすっかり仲良しさんですね…」