烏丸陽佑のユウウツ
「いや、別に。気にするな?一方的な思いの人間が何て思っても、そこはまだ関係無い、干渉される覚えの無い領域の事だ」

「でも…て言っても、…私、いつもこんなんだから。…今更ですけど」

「そうだよ。今更だよ」

「あ…。ごめんなさい…本当に…いつも簡単に甘えて…」

「フ、どうした。今朝はやけにしおらしく謝るな。…気にするなって言ってるだろ?いいんだって。一々俺が、俺の事を好きかも知れない人が居るなんて思いながらやれるか?それに…好きなら好きって言ってくれなきゃ解んないだろ?それは俺にしてみたら思われてない事と同じだ。……例え好きなんだろうなって、解り易く見えていてもだ。
店に来る女性っていうのは、ああいう場所だから大胆にもなれるし、俺の事は日常に関わらない、ここだけの人間だからってところで、さらけ出す相手でもある。まぁ、ファンなんです、なんて言われるくらいの事は、お互いの駆け引きの為に用意された言葉みたいなもんだよ。
気分よくさせて、自分も気持ちよくなりたい、ちょっとドキドキしながら…、そんな感じで飲みたい時もあるだろ。ま、非、日常だな」

「…言ってくださいね?」

「…何をだ?」

「彼女が出来たら、です。私、知らなくて、甘えて誤解させる事をしたらいけないから。今も…だったらするなって話ですよね。居なくても可笑しい行動をしてるにはしてるんですけどね」

彼女…ね。それは、無いわな。
俺を自分のモノみたいにって意味か?…フ。なら…。

「わざわざ言う訳ないだろ?ていうか、梨薫ちゃん、そう言っておいて…それって、居ない内は遠慮なく甘えるつもりだからって事だろ?」

彼女になるか?って聞いたら、なんて答えるかな…。ま、こんな事、こんな風には言わない。

「…多分、可笑しくても、そのつもりだと思います」

「フ、…多分?そのつもり?とか…自分の事だろ?
…心配しなくていい。気を遣わなくても大丈夫だ。迷惑だとか思ってないから…前にも言っただろ」

だから甘えてしまうとも言われたか…。仕方ないさ。何でも許すのは…仕方ない事だ。


「ここで大丈夫です」

梨薫ちゃんのマンションに着いた。

「いや、いいけど。鍵が差さってるかどうか、確認してみよう。まだ俺も居た方がいいだろ。乗り掛かった舟だし?
じゃないと、無かった時どうする、一人で右往左往して困るだろ」

「あっ、そうですね、絶対狼狽えますね。…解りました。では部屋の前までお願いします」

「おぉ、お安い御用だ」
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