烏丸陽佑のユウウツ
聞き間違いではない。ドアが開いた音がした。何故だか解らないが俺は振り向かなかった。
そこに多分梨薫ちゃんが居るからだ。
終わったんだ。終わらせたんだ。だから、俺から行く事はもうしない。
来ては駄目だったんだよ。
サンダルの軽い音が俺を追って来ていた。近くなった。
ドンと背中に強い衝撃を受けた。腕が回された。
あぁ。…はぁ、今回は一体何て言うつもりだ。
暫く待っていたが何も声は聞こえて来なかった。…本当にこの腕は梨薫ちゃんなんだろうか。
とうとう根負けしたのは俺だった。
「…驚かせるな。ドキドキするだろ。…居たならいい。寒いから部屋に戻った方がいい。待ってる奴が居るんだろ」
声は返って来ない。はぁ。またか。一体何を考えている。
「離してくれないか。もう…変な間とか、思わせ振りな事は止めよう。何も言わない事は思って無いと同じだって言っただろ?上手く引き寄せたつもりか?メール、途切れさせたのはわざとか?」
「…」
「そうやって、いつもいつも応えなくなるのは何を望んでいるんだ。いい加減にしないか?俺を苛々させるのが目的なのか。そうして、言いたくもない、酷い事ばかりを俺に言わせたいのか。どうなんだ」
そうか…こんな事しか言えなくさせたいのか。…そうか。そうなんだな。そうして、切ってしまいたいんだな。自分では踏ん切れないから、だよな?
「…」
はぁぁ……。
「……試した訳じゃないです。来てくれて…嬉しかった。有り難うございました。携帯は誤操作です。本当です。まだ、続きはありました。でも、…直ぐ続きを送らなかったのはズルをしました。…会いたかったからです。
陽佑さんは、きっと来てくれるって。話の内容から心配してくれるかもって。…ごめんなさい、そこは狡さが働きました。こうして…」
はぁぁ。回されていた腕を解いた。