烏丸陽佑のユウウツ
「やっぱり…思う壺って訳だ。はぁ、…我ながら情けない。まんまとしてやられたって訳だ」
止めよう…もうこんなこと。
「あ、違う、そんな…。陽佑さんは悪くないんです。陽佑さんの優しさを知っていてズルをしたのは私なんです。ごめんなさい。私…」
「出られるか?」
「え?」
振り返った。久し振りに見る…梨薫ちゃんの顔だ。…どうしてそんな顔をしている。
手を伸ばして頬に触れたくなった。
「今から俺のところに行く。悪いが歩きだけど。DVD、持って来れるか?それから、そのままでは駄目だ、上着を着て来いよ」
「…あ、はい!ちょっと待っててください」
はぁ…こんな嬉しそうな顔をしている梨薫ちゃんに、俺は…何をしようとしている?…。
「あ、ちょっと待て。その携帯、貸してくれるか。慌てて来て、俺のはバッテリー切れになったんだ。急いで連絡したい事があるんだ、悪い、いいか」
「いいですよ、どうぞ」
携帯はいとも簡単に俺の手に渡された。
「…サンキュ。あ、黒埼君は居ないのか」
「はい」
…そうか。…そうなのか。本当なのか?…。
梨薫ちゃんの携帯を借りて俺は急ぎメールをやり取りした。そして、履歴を消した。
「お待たせしました。陽佑さん」
上着を着て小さいバッグを手に出て来た。鍵を掛けてバッグにしまった。
「DVDは?ちゃんと入れて来たか?」
「はい。ちゃんと入れました」
有り難うと言って携帯を返した。それもバッグに入れた。
俺は梨薫ちゃんの手を取り、繋いだ。
「あ」
「…驚かせたか?帰るまで、寒いからいいよな?」
「…はい」
今までの俺達の日常とは反応が違った気がした。少し恥ずかしそうに見えた。……誤解、させたか。なら、上手くいってる。
俺の思い違いじゃなきゃな…。
梨薫ちゃん…俺の方がもっと狡いんだよ。
エレベーターに乗り、降りた。