烏丸陽佑のユウウツ
俺の部屋に歩いて向かいながら、他愛無い話をした。
暮れから正月は何もしていなくて時間が過ぎたとか、仕事始めはいつからなんだとか。心の無い話を思いつくまました。それでも梨薫ちゃんは応えて色々話をしてくれた。
マンションに着いて駐車場に下りた。
「え、どこか行くんですか?」
「ああ、まあな」
それ以上聞いて来ないのは、もしかして、別荘に行くと期待させてしまったかも知れなかった。
暫く走って俺は駐車場に入った。場所は解り易かった。少し手前から梨薫ちゃんの様子が見る間に変わっていたのは解っていた。ここまで来て解らないはずはない。
支持された場所に停めた。
「…陽佑さん、…ここ。どうして…」
エンジンを止め、シートベルトを外した。
「ああ。ここは梨薫ちゃんがよく知っているところだな。ここは最近まで…暮らしていたところだもんな」
そうだ。ここは、部長さんのマンションだ。
「陽佑さん…何故こんな事を…」
「疑問は後だ。取り敢えず行くよ?さあ、下りて?」
車から下りてマンションの入り口に回った。部屋番号を押した。…カチャ。
「烏丸です。突然すみません」
「どうぞ。お待ちしてました」
「陽佑さん…」
そんな顔、しないでくれるか。
「ん?何を考えてるの、ってとこか?」
「…どうして、こんな…」
エレベーターに乗った。
「んー、何も考えてないよ」
「そんな…何も考えてないなんてない…。考えたからこんな事…」
ポン。着いた。あ。部長さんは部屋から出て来ていた。こっちに来ていた。そうだな。何も考えてないなんてないな。敢えて言うなら、お節介?…かな。
「ぁ…部長…」
姿を確認して梨薫ちゃんは呟き部長さんを見た。
「梨薫」
待っていたよと、言わんばかりの愛おしい者に向ける顔つきだった。
「あ、陽佑さん。どうし…」
エレベーターから出るように促しながら、言葉を被せた。
「もう解っただろ?部長さんとDVDを見るんだ。そうするんだ、見せたいものがあるって、夢でだって見ただろ?」
「…あ。陽佑さん。でも…それは夢で…」
陽佑さんは?という問い掛けるような顔をしていた。そう取るならな。
こんなの違う。私は陽佑さんと一緒に居る、見るつもりで出てきたの、なんて、思ってるだろうか…。はぁ…そうだとしても……。
「俺は一緒じゃない。帰るよ。気に掛かることは納得しないと嫌な性分だろ?夢だっていっても、ずっと気になるだろ?
大事な事は、大切な人と見るもんだ。そしたら、どうするのが一番いいか解るから。…解って来るから。
騙したように連れて来て悪かったな。途切れさせたメールの仕返しだ」
誤操作なんかじゃない。続きを送るつもりは止めたんじゃなくて最初からなかった。
あれは、わざと途中で止めたんだ。そうだろ?