艶恋オフィス クールな室長に求愛されてます
駒宮室長は私が帰り支度を終えるのを出入り口で待っていてくれた。


すっかり薄暗くなってしまった廊下を、駒宮室長の半歩後ろをついて歩く。

「……ったく、佐々田は手がかかるな」

冗談とも本気とも取れない、いつもよりも柔らかな口調で駒宮室長が背中越しに呟く。

人気のなくなった廊下では、駒宮室長の呟きがやけに響き渡った気がする。

駒宮室長の言葉に、思わず涙が零れ出てきてしまいそうになって私は下唇を噛みしめる。


「……すみません」



「俺は、手のかかる女は大歓迎だ」

小さく呟いた私の言葉に駒宮室長は小さく笑う。


だけど、そんな駒宮室長の言葉は私を通り過ぎて行ってしまう。


居なきゃ困る部下だと思われたいのに、ただの部下でもなく、手のかかる部下と思われてしまっているなんて……

駒宮室長に、そう思われているのが、ただただ悲しかった。


もう思いは封印しよう。そして、いい部下になろう。

明日から一生懸命働こう。
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