艶恋オフィス クールな室長に求愛されてます
ウインドウディスプレイで盛り上がる私たちの会話を遮るように、テーブルに置かれていた郁ちゃんのスマホが震える。

「あ、メールだ」

郁ちゃんは、満面の笑みでスマホを手に取ると、一気に頬を赤らめる。

「郁ちゃんの彼氏からのラブメール」

祥子さんが私の耳元でこっそり教えてくれる。

「ん?」

も、もしかして彼氏って駒宮室長…!!?

話の意図が分からなくて私の頭は混乱し始める。

「もちろんバーチャルですからね」

きっと祥子さんの囁きが聞こえていたのだろう。

郁ちゃんは私を見て、恥ずかしそうに微笑む。


「えっ?!」

「アプリですよ、ほら」

思わず聞き返してしまった私に、郁ちゃんはスマホの画面を見せてくれる。

そこには、金色の長いサラサラの王子様。
もちろん白タイツで馬に乗っている。


郁ちゃんは、その画面をもう一度愛おしそうに眺めるとスマホをテーブルに戻す。

「もちろん、私のリアルに好きな人は駒宮室長です」


しっかり語尾にハートマークをつけて、郁ちゃんは笑って見せる。


そんな郁ちゃんに私は、愛想笑いを浮かべるのが精いっぱいだった。


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