番犬男子
この声って……。
あたしが聞き間違えるわけがない。
『千果……!』
離れ離れになる前、あたしを呼んだ最後の瞬間が鮮明に脳裏を過る。
あぁ、待って。
こんな不意打ち、反則だ。
再会してから初めて名前を呼んでくれたのが今だなんて、ずるすぎるよ。
俯いていた顔をゆっくり上げていけば、そこには、
「お兄、ちゃ……っ」
ヘルメットもかぶらずにバイクにまたがっている、大好きなお兄ちゃんがいた。
どうしてここにお兄ちゃんが?
お兄ちゃんはあたしを助けには来ないと、絶対にないと、期待を捨てていたのに。
あたし、お兄ちゃんのこと、全然わかってなかった。
ダメだ。
もう、泣きそうだ。