番犬男子




もうすぐそこまで見えてきた答えすら、銀世界に埋めている。



まだ……今はまだ、いい。


そう留めながら。




「だから、あたし、海を越えて会いに来たんだよ」



バカみてぇだ。

苦しがってるくせに。



嘘か本当か見抜ける天才じゃなくたって、そんくらいバレバレなんだよ。


見栄かプライドか知らねぇが、空元気じゃなく、素のお前を見せろよ。



……こっちが苦しくなるだろうが。クソが。



なんで俺が、お前を思って苦しがらなきゃいけねぇんだよ。理不尽だ。




胸にあふれる苦味なんか、消えちまえ。



全部、消えて、なくなれ。


「嘘」に、なれ。




ドクンッ……!

震える心音が、何かを伝えたがる。



けれど、その“何か”は、はっきりとは汲み取れなかった。


ただ、心なしか、懐かしい感覚がした。







――俺らは、まだ、知らない。






「お兄ちゃんっ!!」


「……ち、か?」



ポタリ、と大嫌いな色が垂れる。

左目と同じ、濁った赤。


あの色と共に、心の臓を貫かれたみたいな衝撃が落とされる。




「やだ、泣かないで」


「千果……」


「お兄ちゃんは苦しまなくていいんだよ」



封じていた誠一郎の記憶が、あまりにも残酷で、脆い、孤独な罪と罰だったなんて。


想像もしていなかった。




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