黒田豪が隣の席に腰を下ろしたのと同時に、
「あの…」

勇気を出して、彼に話しかけた。

彼の視線が自分の方に向いた。

「あたし、滝ひかる(タキヒカル)って言うの。

何かわからないことがあったら、いつでも言ってね」

幼いながらの精いっぱいの勇気だった。

彼はフッと微笑むと、
「よろしく」
と、言った。

その微笑みに、ドキッ…と心臓が鳴った。

どこか大人っぽい雰囲気なのに、笑った顔は素敵だと思った。

「うん、よろしく…」

そう伝えた声は、彼に聞こえたのかどうかはわからない。

今振り返ってみると、自分は恋に落ちたのだと思った。

小学5年生の冬の始め、初めての恋をした。

 * * *
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