だから、笑って。
物体の正体はサッカーボールだった。
サッカーボールは交差点のど真ん中に転がっていった。
ちょうど信号が赤になり、交差点には運よく車がいなかった。
誰かが誤って転がしちゃったのかな・・・?
周りを見渡すと交差点の脇に一人の三歳くらいの男の子がいた。
男の子は左右をきょろきょろと見渡してボールを取りに駆け出した。
ふと、目の前の信号にを見ると青信号だった信号が点滅して赤になった。
ま、まずい・・・・!
気づいた時にはもうトラック側の信号は青に変わっていた。
凜くんを見ると、凜くんもその状況に気が付いていたようで。
トラックはみるみる速度を上げて男の子の方へ向かう。
男の子はボールを取るのに必死で、トラックが近づいてきているなんて気づいていない様子。
「菜乃花、これ」
そう言って凜くんは重たいリュックを私に渡した。
そして、目の前の交差点へ飛び出した。