愛を知らない一輪の花

「きみ、松下君の社員の子かい?」

「本当に可愛いね〜。歳は幾つだい?」

「恋人はいるのかね?」

「良ければ、うちの息子なんてどうかな?」


百合は矢継ぎ早に声をかけられ、少しパニックになりながら必死に答えようとする。

「はいっ。あ、あの、、、」


「皆さん、彼女が困っています。斉藤さんはうちで11年も頑張ってくれている、わが社の社員ですよ。歳は確か29歳。ちなみに恋人がいるので息子さんの結婚相手にはなれませんよ?」

苦笑いの蓮に、嘘をつかせてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。


「先にお入り下さい。私もすぐに参ります。」

「では皆様、こちらへどうぞ。」


支配人に案内され、取り引き先の男性達は店の中に入って行った。

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