友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~

夕食を二人でつくる。

琢磨が作るのを、のぞみがビール片手に、隣から覗き込むだけだけど。

「豪華だねえ」
「だろ」

最後だからと、カニやホタテなど、いい食材を買った。

「締めは、雑炊で」
「いいねえ」

のぞみが嬉しそうに笑うのを、琢磨も幸せな気持ちで眺める。

二人向かい合って、食事をした。

思えば、二人でこうやって食事するのも、それほど多くはなかった気がする。

「どう?」
琢磨が尋ねる。

「うまいね」
のぞみが口いっぱいにほうばりながら言った。

「鍋の素と、どっちがいい?」

琢磨が聞くと、のぞみは「ふむ」と腕を組んだ。

「……鍋の素、かな?」
「マジで? なんでだよっ」
琢磨はわめいた。

「だって、手間かかりすぎ。だしとんのに、どんだけ時間かかってんのさ」
「えー」

琢磨が抗議の声を上げる。

「でも、うまいのはこっち」

のぞみが箸で、鍋をつつく。

「効率を考えると、鍋の素に軍配。わたし一人じゃ、つくないもん、こんな手間かかる鍋」
そう言って微笑んだ。
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