友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~
缶のままのビール。
袋を開いたままのさきいかとお菓子。
上を見上げると、真尋が悩み抜いて買ったスタイリッシュなライトがテーブルを照らしている。
この綺麗で真新しいマンションには不釣り合いだけれど、それもいいかと酔いも回ってきて考え始める。
「これ以上飲むと、明日走れねーな」
琢磨は言った。
「は? 走る?」
のぞみが素っ頓狂な声を出した。
「そう、走んの。体力が基本だろ」
琢磨はそう言いながら、ゴミを片付け始めた。
のぞみはまじまじと琢磨を見つめる。大きな目に見つめられると、悪いことをしてるわけじゃないのになんだか居心地が悪い。
「そんなだっけ、桐岡って」
「そんなって?」
空いた缶を抱えて、キッチンへ向かう。流しに入れて、手早くすすいだ。
「だからさあ。そんなに細かくいろいろしてたっけ?」
のぞみが、ビール片手に、キッチンの入り口でもたれる。
「もっとおおらかで、よく笑う感じじゃなかった?」
琢磨は水道を止めて、のぞみを見た。
「そうだったかも」
のぞみの脇をすり抜けて、ダイニングへと出る。
「隙間時間でどんどんこなしてかないと、おわんないんだよな、1日が」
「ノルマでもあるの?」
のぞみがビールを飲む。
「そりゃあるさ。芹沢はないのか?」
「わたし、事務員だもん。不動産会社の電話番」
ははっと軽く笑った。
「でもいいよ、気楽で。もちろん、こんな豪華マンションなんか買えないけどさ、好きなことしてゴロゴロしてる」
「ふうん」