友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~

外に出て、真っ暗な空を見上げる。

結局会えずじまい。
なんのためにここまで電車で来たのかわからない。

「なにやってんだ、俺」

琢磨は駅に向かって歩き出した。

友達とでもあってるんだろうか。
そういえば、のぞみの交友関係をまったく知らない。
仲のいい友達や、よく行くお店など。

「でも俺も、のぞみに何も教えてないし」

友達というのは、どういう関係なんだろう。
友達なら交友関係など、当然知っていることのような気もするし、何も知らされなくても当たり前という気もする。

腕時計を確認すると、打ち合わせまであと1時間。
ちょっと足を速めて、駅の改札へ階段を上る。

定期をポケットから取り出して、ふと横を見て驚いた。
喫茶店の窓際に、のぞみの横顔が見えたからだ。

琢磨は人波の中立ち止まった。
しばらくその横顔を見つめる。

「あいつ……」
初めてみる顔だった。

一緒にいるのは男。
長身で、いかにも楽しそうに笑っている。

でものぞみの顔は、感情を奥深く閉じ込めて、何も伺えない。

あんな顔、俺の前でしたことない。

男が視線に気づいたのか、ちらっとこちらを向いたので、琢磨は思わず視線をそらし歩き出した。そのまま改札を入る。

もう一度振り返ると、もう柱の陰に隠れてのぞみと男の姿は見えなかった。

納得いかないまま、ホームへ上るエスカレーターへと向かった。

友達?
知り合い?
少なくとも、のぞみにとって楽しい相手じゃない。

胸のなかに、もやもやと何かが広がっていく。

相手は、誰なんだろう。
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