友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~

バンッと大きな音を立てて、のぞみがリビングへと飛び出した。


胸が喚いていた。

増水した川が汚れた水をコンクリートの道路へはねあげるように、琢磨の心にもたくさんの黒いシミが出来始める。

ひどい後悔と、この熱を取り繕う言葉が、頭を駆け巡って、動けない。

「ありがとね、これで結婚式行くから」

のぞみは振り返らない。

「着替えるね」

のぞみは琢磨から視線を外したまま、床のスウェットをかき集める。

琢磨は、喚き続ける胸の叫びを、拳を力任せに握って堪えた。


のぞみが部屋を出て行くと、琢磨は崩れるようにベッドに腰を下ろした。

まだ、体の中を疼きが駆け巡っていた。

仰向けに転がり、顔を両手で覆う。

「のぞみは、友達、友達、友達」

唱えるように呟いた。

「あいつとは、友達でいたいんだ」
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