永く青い季節 〜十年愛〜
「でも、雨、結構降って来ちゃったし…」
彼が道路の反対側の先程の傘に目を向け、小声で呟いた。
「あれ…はダメだよね」
「落とし物…ですよね?人の物ですから…」
私は慌てて否定する。
「そうだよね。て言うか、見てたんだ?」
「あ、はぃ」
「しゃーない。学校まであと少しだし、走るか。このままじゃ遅刻だし」
「ごめんなさい、私のせいで」
「そんなことないよ。たいした時間じゃないし」
「あ、あの…私、傘拾って行くんで、先輩もう先に行って下さい」
「え?でも、あんなバキバキになっちゃって、もう使えないだろ?」
「そうですけど…傘の骨で車パンクとかさせたら申し訳ないし。
それに、私が拾ってやらないと何か可哀想だし。
先輩、ありがとうございました。それじゃ」