永く青い季節 〜十年愛〜


「私は試合の応援にも行っていたから、彼が怪我をした瞬間も、コートから担ぎ出される時の悔しそうな表情も見ていて、とても辛かった。
ここに運び込まれた時も付き添ったし、その翌日は仲間と一緒にお見舞いに来たの。仲間達が帰る時、私は身の回りのことを少しでも手伝いたくて一人残ったわ。
そしたらね…暫くして、みんなと居る時は陽気に笑ってた彼が泣いたの。声を殺すようにして」


彼女の言葉に、私は衝撃を受けた。
そんな姿、私に見せたことなど、一度もなかったから…。


「一年の時は、当然のことながらレギュラーになれず、去年は二年でただ一人選抜されたのに、運悪く強豪チームと当たり、初戦で敗退。
今年が最後だったのよ。折角チームは勝てたのに、彼はこの後の試合に出られない」


全身から少しずつ力が抜けて行くのがわかった。

私は、いつもいつも、彼と二人だけの世界に浸り、愛され、優しくされて、ただ幸せな気分に浸っていた…。
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