【完】こちら王宮学園生徒会執行部
「いつみ?」
肩を掴んだかと思うと、ちりっと鮮やかな紅い痕を残す。
その唐突な行動に目を瞬かせていれば、「浴槽にお湯張ってある」と彼は短く告げて。
「風呂入ってこいよ。学校行くんだろ」
「あ、うん……」
何事もなかったかのように、部屋を出ていく。
時計を見れば時刻は6時で、はやく準備しようと思い立って必要な着替えだけ持ってお風呂に向かうのだけれど。
「……何がしたかったんだ」
つぶやいて、脱衣所でキャミソールに手をかけた時。
ふっと自分の身体を見下ろして、唐突に気づく。
「……!!」
そうだわたし、昨日着物着て……!
しかも車に乗って寝ちゃったってことは、着物を脱がせておいてくれたのはいつみなわけで。
「……っ」
ちょ、ちょっと待って。
わたし昨日着物を着るのに専用の下着は持ってないからって、できるだけラインが出ないように薄いものしか身につけてないんだけど。
上なんて本当にキャミソール一枚、で。
正直、光の角度によっては薄ら透けてしまうし、なんの気休めにもならない。
じわりと、頰が赤く染まる。
いやもう何度も見られてるけど……!わたし以上にわたしのすべてを彼は知り尽くしてるけど……!
さすがにこれは恥ずかしすぎる。
あまりにもぐっすりだったから、おそらく着替えさせることは難しかったんだろう。それはいい。それはいいけど、己の醜態ぶりに、地に埋まってしまいたい。