【完】こちら王宮学園生徒会執行部
「明日そのまま学校行くんだろ?
キャリーケースどうするんだ?」
あえて知らないフリをして、彼女の作戦を逆手に取ったのか。
……それに彼女が気づかないかは、俺もわからないけど。バレたら確実にあの子は逃げるだろうし。
「ああ、わかった。それならいい。
……あと、お前いまスクールバッグ持ってるか?そこに俺の財布間違って入ってねえ?」
……財布? お前今日持ってなかったっけ?
さっき飯食いに行った時普通に出してたじゃん。
「やっぱり入ってたか。
どうりで無いと思った。……いや、ひとまずICカードに金入れてあるからコンビニぐらいなら行けるけどな。ほかのカードはそれに入ってんだよ」
っていうかそのダイニングテーブルに置きっ放しの、お前の財布だろ?と。
俺らの言いたいことには気づいているらしい。
……が、いつみは視線だけで「静かにしてろ」と訴えてくる。
それに、俺はともかく他の奴らは口止めされている分、ここにいるとバレたらまずい。
「わかった。あんまり学校サボるなよ?」
穏やかな口調でそう言って、「おやすみ」を告げてから電話を切るいつみ。
その姿は、やっぱり落ち着いていて。
「先に手打っといて正解だったな」
「全然わかんねえんだけど?」
「だから、財布だよ。
あいつのスクールバッグに、俺の持ってるコレとまったく同じもんを仕込んでおいた」
……財布を仕込んだ?
「あいつのスクールバッグ、形が特殊で両側にファスナーのポケットが付いてるんだよ。どっち側から見ても全く同じデザインになってる。
そのうちの片方は普段から南々瀬が使ってるが、反対側は普段開けない」