【完】こちら王宮学園生徒会執行部
「キャリーケースを持って帰ってくるからそのついでだって言ってたけどな。
……すなわち、無理にでも俺のいない時間に帰ってくるための言い訳だろ」
「鉢合わせを避けたってことか……」
「だからそこを狙う。
GPSだと逃げられる可能性もあるしな。あいつがどうしても"自分から帰ってくる"しかない状況を、偽の財布を仕込んでおけば作れるだろ?」
確かに、追いかけるよりも、帰ってきてくれる方が捕まえやすいけど。
実際にそんな作戦でうまくいくんだから、俺はいい加減幼なじみが怖ぇよ。
「……ただしこれは、南々瀬が俺の作戦に気づいていなかったら、の話だ。
気づいていたら、それより上の作戦で俺のことを撒くだろ」
「……でもそれから逃げる作戦ないんじゃない?」
「……面倒なのはあいつと一緒にいる男だよ」
はあ、といつみがため息をついた。
平然としているように見えるけど、南々瀬ちゃんがたとえ一晩ほかの男といるのは、許せねえんだろうなと思う。
「お前らは顔合わせたのか?」
「すげー変人だったぞ」
「……だろうな。
でもあの男のアレは、ただの演技だぞ」
「は……?
どう見てもあの変態は素でしょ」
夕陽が不機嫌に眉間を寄せる。
でも「演技だ」と言い張るいつみ。柴崎茉文。俺も実は見たことがある。……というのも、俺もパーティーに同行してるからだけど。
「語学堪能で頭が切れる、医療界の有望なプリンス、だっけ?
ああやって振舞ってるだけで、実際は世界の研究者を唸らすレベルの超絶天才」