【完】こちら王宮学園生徒会執行部
名前を聞いていなかったから、南々瀬ちゃんが「変態」と言う男と、柴崎がイコールで結ばれなかっただけで。
実際に名前を聞けばすぐにわかった。
「あれも全部計算して演技してんだから、
只者じゃねえよなー……」
「……そうだな」
「南々瀬ちゃん手出されねえ? 大丈夫?」
あの子が柴崎の本性を知ってんなら良いけど。
そうじゃなかったらどうするんだと少しだけ心配していたら、ルアがふいに「そういえば……」と顔を上げる。
「ななせ、財布のことがなかったら、
かえってこないつもりだったんだよね……?」
ん?と首をかしげる。
そうだな。いつみが仕組んだ財布のことで彼女は一度帰宅するわけで、それがなければ帰ってくるつもりはなかっただろうし。
「……いつみからのゆびわ、どうするんだろう」
「どっかで捨てんじゃねーの?
あいつからも指輪もらってたっつーことは、相手の男が捨ててるかもしれないだろ」
「でもななせだよ?
大事にのこしておくか、じぶんの手元にはのこさないか。……どっちだとおもう?」
莉央の予想に言い返して、ルアがいつみを見る。
グレーを孕んだ瞳は、いつもよりも翳っていた。
「……荷物を取りに帰ってきた時、置いて行ったんだろ。
どこにあるのか、なんとなく見当はつく」
そう言って、いつみが静かにため息をつく。
本当にどこに置いてあるのか、見当がついているらしい。だから、いまそれをわざわざ確認する気も無いらしい。……それよりも。
「お前……大丈夫か?」