【完】こちら王宮学園生徒会執行部
「……いつみ」
「……例えば、明日無事に南々瀬を捕まえたとするだろ。
そしたら今度、危険な立ち位置にする柴崎のことを、救ってやれなくなる」
「………」
「でもこのままにすれば、南々瀬の親はまた利用されることになるし、南々瀬も解放されない。
……はじめから、南々瀬も柴崎も救ってやる手段は無い」
南々瀬ちゃんが、どれだけ優しい子なのかを知ってるから。
どちらか一方を見捨てるだなんてことは、いつみにはできない。……それでなくても珠王グループの跡継ぎとして、犠牲は出せない。
「……でも逆に、ひとつだけ、方法はある」
……方法が、ある?
誰も不幸にならない、やり方で?
「夕帆。お前に頼みがある」
「あ、ああ。……頼みって?」
「明日、南々瀬がもどってきたら、確実に捕まえておいてほしい。
……おそらく一緒にいるであろう柴崎も、だ」
ぱちぱちと、思わず目を瞬く。
それから「別に良いけど」と肯定しながら、疑問を口にした。
「お前は一緒にいねえの?」
「……俺はやることがある。
だからお前は、とにかく南々瀬と柴崎を保護しといてくれればそれでいい。その代わり、実行するために大学の講義をサボることになるが、」
「それぐらい良いに決まってんだろ。
っつうか話聞いた時から明日はそのつもりだったし、あいつらもどうせ気にして学校どころじゃねえよ」